senseinomirai日記

学校の先生がみる我が子の宿題大公開 最難関中学受験 丸写しはしないでね     ☆読書感想文・自由研究公開中☆2020

研究論文「ぼくらの生活にひそむ算数の研究」  5年生 

研究論文 5年

「ぼくらの生活にひそむ算数の研究」

 

1 研究の動機
 ぼくは学校で勉強している教科の中でとくに算数が好きで、勉強の合間に色々な算数に関する本をいつも読んでいる。その算数に関する本の中で、日常生活において目に見えない所にひそむ算数について書いてある本があった。  
 具体的には日常生活における「かたち」と「かず」に関する話がその本には書いてあった。ぼくはいつも何気なく生活している中でさまざまな所に算数が隠れていることにとても興味をもった。今回の研究では「かたち」と「かず」に注目して、ぼくらの生活にひそむ算数について研究してみることにした。

 

2 研究の内容
 ぼくが最初に読んだ「日常にひそむうつくしい数学」(冨島 佑允 朝日新聞出版)に参考文献として記載されていた本をもとに、今回取り上げる「かたち」と「かず」に関する参考書目(表1)を作成した。

表1 参考書目
1.「日常にひそむうつくしい数学」  冨島 佑允 著  朝日新聞出版 (2019)
2.ビジュアル図鑑「自然がつくる不思議なパターン なぜ銀河系とカタツムリは同じかたちなのか」フィリップ・ボール 著 桃井 緑美子 訳 

                 日経ナショナルジオグラフィック社(2016)
3.「波紋と螺旋とフィボナッチ」 近藤 滋 著  学研プラス(2013)
4.「フラクタル幾何学(上・下)」ベンワー・マンデルブロ 著 広中 平祐 訳
                 ちくま学芸文庫(2011)
5.「素数ゼミの謎」       吉村 仁 著  文芸春秋(2005)

 次にこれらの参考書目について、購入した1と5以外の本についてインターネットを使用して自宅からいちばん近い○○図書館のホームページ上の資料検索のページで検索を行った。1と5以外の参考書目のうち2冊については同じ本が○○図書館にあったため、実際に図書館に行って本を借りて研究を行った。1冊は○○図書館本館で読むことにした。

 

<研究結果>
1 「かたち」について               
 身の回りにあるもののかたちには、ぼくらが知らないうちに様々な算数が隠れている。今回の研究では「ハチの巣の形はなぜ正六角形なのか」「自然界にあるものの形の法則」の2つのことに注目して研究を行った。


(1)ハチの巣の形はなぜ正六角形なのか
ハチの巣は、花から集めたみつ(蜜)を使用して働きバチの腹部にあるろう分泌腺から分泌される蜜ろう(蜜蝋)でできている。蜜ろうのろうはろうそく(蝋燭)のろうと同じである。10gの蜜ろうを作るのに80gのみつが必要とされる。働きバチ1匹が生きている1か月ほどの間に集められる花のみつは4~6gと少ないことからもわかるようにハチが花から集めたみつは、巣を作る材料としての蜜ろうや食料として使用されており、ハチにとっては非常に大切なものである。そのため、ハチが巣を作るにあたり「できるだけ少ない材料(蜜ろう)で巣を作る」「できるだけ巣を広くする」という2つのことが大切である。
 まず「できるだけ少ない材料で巣を作る」ということを考えてみる。同じ大きさで平面を隙間なく埋める図形を考えるとそれを満たす図形は「三角形」「四角形」「六角形」の3つしかないことがギリシャの哲学者ピタゴラスによって発見されている。次にこの3つの図形のうちで巣の1つの部屋の外側の長さが同じ時に最も部屋が広くなる図形について考えてみる。3と4と6の最小公倍数は12なので、外側の長さが12㎝の時を考えてみたい。
 三角形の場合を考えると外側の長さが一定の場合に最大の面積になるのは正三角形の時で、正三角形の1辺の長さは4cmとなる。このときの正三角形の高さが2√3cmとなることが数学ででてくるピタゴラスの定理からわかる。この√3はルート3と読み、かけると3になる数を意味する。やはり算数ではでてこないが√3の大きさは11.7320508…であることがわかっている。以上より2√3cmは約3.46cmとなり、正三角形の面積は

f:id:senseinomirai:20191101235133p:plain

      4×3.46÷2=約6.92㎠

次に四角形の場合を考えると外側の長さが一定の場合に最大の面積になるのは正方形の時で、正方形の1辺の長さは3cmとなる。このときの正方形の面積は

f:id:senseinomirai:20191101235301p:plain

      3×3=9㎠

最後に六角形の場合を考えると外側の長さが一定の場合
に最大の面積になるのは正六角形の時で、正六角形の1辺の長さは2cmとなる。このときの正六角形の面積は1辺が2㎝の正三角形が6個分となる。
高さは√3=約1.73㎝となるので、

f:id:senseinomirai:20191101235341p:plain
     (2×1.73 ÷2)×6=約10.38㎠

 以上より同じ量の蜜ろうで巣の部屋を作る場合、正六角形が最も適していることがわかる。           
 実際にハチがこのような計算をするわけではないが、正六角形の巣を作っており、このハチの巣の正六角形の部屋の構造はハニカムhoney comb)構造と呼ばれる。このハニカム構造は、材料の強度を大きく損なわずに材料を減らせる軽くて丈夫な構造なため、飛行機の翼や自動車の本体、鉄道のドアなどの工業製品に応用されている他、サッカーのゴールネットにも採用されている。

f:id:senseinomirai:20191102160857p:plain   段ボールのハニカム構造

 

(2)自然界にあるものの形の法則
 自然界にあるものの形には複雑な形が多いのに対して人工的なものの形には単純な直線や曲線などの単純な形が多い。考え方のひとつとして人間は知性を持つので人間が作りだす人工的なもの形には規則性があり単純な形だが、自然界にあるものの形は知性を持たないので規則性がなく複雑な形が多いという考え方もあり、以前はそのような考え方が有力とされていた。しかし、フランスの数学者ベンワー(ブノワ)・マンデルブロは、無秩序で複雑で一見すると規則性がないようにみえる自然界にあるものの形において数学的な法則が隠れていることを発見した。
 マンデルブロは、形の一部分が形全体と似ている自己相似を特徴とする図形のことをフラクタル図形と呼んだが、自然界にあるものの形にフラクタル図形が多いことに気づいた。フラクタル図形の1例としてコッホ曲線がある。
       

f:id:senseinomirai:20191101235701p:plain


     図1 コッホ曲線の作り方
      (日常にひそむうつくしい数学 ページより引用)


 コッホ曲線は、①「直線を描く」②「直線を3等分して中央の線を1辺とする小さな正三角形を描く」③「正三角形の各辺を3等分して同じく中央の線を1辺とする正三角形を描く」④「複雑な図形ができあがる」という一連の操作を繰り返しで作られる複雑な図形である。
 正三角形をスタートとしてコッホ曲線を描くと図2のように雪の結晶にそっくりな図形ができる。この図形はコッホ雪片と呼ばれている。

f:id:senseinomirai:20191101235736p:plain

          図2 コッホ雪片
          (日常にひそむうつくしい数学 ページより引用)
 

 このように単純な繰り返しをすることで自然界にある複雑な形にそっくりな形がつくられることから、自然界にある形は「自己相似による単純な繰り返し」という法則が隠れていることが現在では考えられている。

 

2 「かず」について
 身の回りにあるかずにも、ぼくらが知らないうちに算数がかくれている。かずについては「フィボナッチ数列」と「素数ゼミ」について研究を行った。

(1) フィボナッチ数列
 フィボナッチ数列とはイタリアの数学者フィボナッチが
「算盤の書」という本の中で書いてから広く世の中に知られるようになった数列で、フィボナッチ数列はアラビア世界ではすでに以前から知られていた。フィボナッチは商人であった父の仕事の関係でアルジェリアという国に住むことになり、そこで当時最先端であったアラビア数学を学び「算盤の書」を書いたという。
 このフィボナッチ数列は、1、1、2,3,5,8… という数列で、最初に並んだ2つの1からスタートして、前の2つの数字
を足して次の数字が作られていく数列である。このフィボナッチ数列は自然界の色々な場所でみつけられており、例えば花びらの枚数はフィボナッチ数列に従う。また、フィボナッチ数列を使って作図した図形の1つに図3に示した黄金らせんというものがある。フィボナッチ数列を1辺の長さとする正方形を作り、それを渦巻き上に並べていく。この正方形の対角を結んでいくと黄金らせんを作ることができる。 

f:id:senseinomirai:20191101235915p:plain
   図3 フィボナッチ数列を使って作図した黄金らせん
    (日常にひそむうつくしい数学 ページから改変引用)

 この黄金らせんは、松ぼっくりのかさの並び方やヒマワリの種の配置、オウムガイの殻などにみられる形である。  
 さらに黄金らせんは大きな長方形に囲まれているが、この長方形を黄金長方形と呼び、この黄金長方形の隣り合う辺の長さは1:1.618という人間が美しいと感じる黄金比と呼ばれる比率に近づいていく。この黄金比は、エジプトのギザのピラミッドやギリシャパルテノン神殿ツイッターペプシのロゴのデザインなどにもみられるという。黄金比フィボナッチ数列に従う形は自然界に多くみられるため、ぼくらは本能的に美しいと感じるようになったのかもしれない。
 植物の葉のつき方もフィボナッチ数列に従うことが知られている。植物の葉は茎の周りに順番にまわってついているが、何周かすると真上からみたときに下の葉と重なる。このように茎を何周したところで何枚目の葉が下の葉と重なるかで分類した葉のつき方を葉序(ようじょ)と呼ぶ。
 この葉序はフィボナッチ数列に基づくシンパー・ブラウンの法則に従う。その理由として、フィボナッチ数列に従うことで葉が真上からみた時に重なりにくくなり、葉が効率よく日光を浴びることができるからと考えられている。

  (写真省略)


(2)素数ゼミ
 算数ではでてこないが数学では素数(そすう)という数がある。素数とは、1と自分自身以外では割れない自然数のことを指す。この素数にはいろいろな興味深い性質があり、その中の1つとして素数ゼミというものがある。
 素数ゼミはアメリカ合衆国の東部から中部に住んでいるセミで、普通のセミは生まれてすぐ地面にもぐり、6~9年地中で過ごしたあとに地上に出て成虫となるが、この素数ゼミは13年か17年という長い期間を地中で過ごし、13年から17年という間隔で一斉に地上にでて羽化するセミのことを指していう。13年周期のセミは4種類、17年周期のセミは3種類知られており、13と17が素数であるために素数ゼミと呼ばれる。なぜこのような13年や17年というタイミングで発生するのかは長年よくわかっていなかったが、静岡大学の吉村仁教授が氷河期までさかのぼってセミの進化の歴史を研究し、その謎を解き明かした。
 今から180万年ほど前に地球に氷河期が訪れ、素数ゼミのいたアメリカ大陸も半分以上が氷河でおおわれた。ほとんどのセミの幼虫は地中で寒さから息絶えたが、氷河でおおわれなかった場所のセミの幼虫は生き残った。これらのセミは成虫になってから2週間のうちにパートナーを探して卵を産まないといけないが、氷河期で仲間の数も減ったため極力地上に出てくる周期が一致するようになった。
 なぜ出てくるタイミングが素数の年になるのかは、素数同志は2つの整数をどちらも割りきることができる公約数を持たないため、セミの成虫が出てくるタイミングが公約数の年に起こる大発生の時期が起きにくくなることと関係している。大発生の時期は雑種が多く生まれ種の繁栄に不利に働くとされるため、大発生することのなかった13年と17年の周期で羽化する素数ゼミは現代まで生き残ることができたと考えられている。

 

3 研究のまとめ
 今回の研究では、ぼくらの生活にひそむ算数について図書館で借りた本を利用しておもに文献調査による研究を行った。今回の研究ではその中の一部についてまとめたが、実際にはさらに多くのことが算数や数学の法則に従っていることがわかった。今は小学生なのでまだ難しい数学のことまではわからないが、今後はもっと色んな算数や数学の知識を理解していきたいと思った。
 今回の研究の問題点としては、図書館で借りた本で調べた研究であったことから実際の葉のつき方などについて調べてみて結果が一致するのかどうかを調べられなかったことが問題点としてあげられる。また、コンピューターのプログラムでフラクタル図形を作ることもできるようで、今後は文献調査の研究だけでなく、自然観察やプログラミングなどの研究もしてみたいと思った。