senseinomirai日記

学校の先生がみる我が子の宿題大公開 最難関中学受験 丸写しはしないでね     ☆読書感想文・自由研究公開中☆2020

読書感想文『南小、フォーエバー』 5年生

題名『南小、フォーエバー』 5年

 

 トシは三上くんとの別れ際になって、二人の友情は永遠に続いていくと確信した。再会して一緒にいる時には気づくことができなくて、トシは惨めな思いを抱いていた。大切なことは、後から冷静にならないと見えないことがある。ぼくはカトリック教育で、目に見えないものの価値について学んでいる。友達同士の心の通い合いが描かれたこの物語は、ぼくの学びを更に深めるきっかけとなった。
 トシは、ラジオ体操の皆勤賞も棒に振り、初めて一人で列車に乗って三上くんに会いに行った。親友の三上くんに会えるのならば、ほんの小さな犠牲に過ぎなかった。けれど三上くんは、待ち合わせの駅のホームへは来ていなかった。ラジオ体操の後、ソフトボールの練習に行ったという。子どもだけで外食する計画も空しく、おばさんの手料理をいただくことになった時には、トシから諦めの感情が伝わってきた。正午を回りようやく帰ってきた三上くんは、「おーっ、ひさしぶりぃ!」と言ったのだが、またすぐに友達とソフトボールの試合をすることになったのだという。トシの存在は二の次だった。三上くんの中では、今の学校のみんなとソフトボールをしたい気持ちと、前から遊ぶ約束をしていたトシとの間で板挟みになっていた。三上くんにとってソフトボールをする仲間は、新しい環境で一生懸命に築いた大切な友達関係だったのだろう。離れ離れになって間もない頃、三上くんからトシに宛てた手紙に「あまりおもしろくありません」とあったのも、馴染むまでの苦労があったからに違いない。トシは背負ってきた大きな期待と裏腹な状況に、まだそう考える余裕もなかったのだろう。 
残されたわずかな希望を持ち、トシは三上くんのソフトボールの試合に一緒に行くことにした。ところが、役目はピンチヒッターだった。出鼻をくじかれたトシには、もう帰る選択肢しかなかった。悔しさと疎外感にさいなまれたトシの後ろ姿が、可哀そうなくらいぼくには想像できた。来た意味がなかった、早く南小の友達のところへ帰りたい、そう思ったことだろう。
 次のバスが五分後に来るというその時、三上くんが駆けてきた。「ちょっとだけでも、キャッチボールしよう」と、三上くんがトシに渡したグローブの甲に〈南小4年1組フォーエバー!〉の文字が見えた。二人は自然と照れ笑いを交わした。友情が蘇った瞬間だった。トシが行きの列車でずっと心に思い描いていた場面にようやく辿り着いたのだ。誰かに会える時を、これほどまでにわくわくしたことがぼくにはあっただろうか。
 新しい人と関わることによって、今までと違う感性を持てるようになることを、ぼくも知っている。新しい発見や趣味が見つかったこともある。友達が新天地で楽しくやっていることは、喜ばしいことなのだ。ぼくは、これから出会う沢山の人との関係を大切にして世界を広げていきたいと思う。ぼくも、一人で列車に乗って知らない土地へ出掛けてみたくなった。

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